ドイツへ留学やワーキングホリデーに行くと、現地のドイツ人と英語でコミュニケーションをとる機会が驚くほどたくさんあります。
ドイツは非英語圏の中でも非常に英語力の高い国として知られていますが、実は彼らが話す英語には、ドイツ語の母語としての影響を強く受けた独特の「クセ」があります。このドイツ人特有の英語は、現地の言葉をもじって「Denglisch(デングリッシュ:Deutsch+English)」と呼ばれることもあるほどです。
私がフランクフルトで1年間のワーホリ生活を送っていた際も、最初は多国籍な環境に戸惑いましたが、ドイツ人の英語の「法則性」に気づいてからは、リスニングの理解度が劇的に向上しました。
この記事では、実体験に基づいて「ドイツ人が話す英語(デングリッシュ)の代表的な特徴」と、「スムーズに聞き取るためのリスニングのコツ」を徹底的に解説します。これからドイツへ渡航される方は、ぜひ出発前にこのルールをインストールしておきましょう!
1. ドイツ人の英語レベルはどれくらい?フランクフルトでの実感
具体的な発音の特徴に入る前に、そもそもドイツ人がどのくらい英語を話せるのかについて触れておきます。
結論から言うと、ドイツ人の英語レベルは総じて非常に高いです。特にヨーロッパの金融・交通のハブであるフランクフルトのような大都市では、スーパーの店員さんから駅の係員、道行く若者に至るまで、ほとんどの人が流暢な英語を話します。
彼らは中学校からしっかりと英語教育を受けており、文法や語彙力はネイティブに引けを取らない人も珍しくありません。議論を好む国民性も相まって、論理的で分かりやすい英語を組み立てるのが非常に上手です。
しかし、どれだけ文法が完璧で語彙が豊富でも、「発音」にはどうしてもドイツ語の響きが混ざります。アメリカ英語やイギリス英語のリスニング教材だけで勉強してきた日本人の耳には、最初はこの「ドイツ語訛りの英語」が全く別の単語に聞こえてしまうことがあるのです。
2. ドイツ英語(Denglisch)の代表的な発音の特徴4選
ドイツ人が話す英語には、明確なパターンが存在します。以下の4つの特徴を押さえておくだけで、聞き取りの難易度はグッと下がります。
① 「th」の音が「s」や「z」になりがち
ドイツ語には、英語の「th(舌を歯に挟んで出す音)」の発音が存在しません。そのため、多くのドイツ人はこの音を「s(ス)」や「z(ズ)」に置き換えて発音する傾向があります。
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Thank you(サンキュー) → Sank you(サンキュー / ザンキュー)
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Thinking(シンキング) → Sinking(シンキング:沈む、という意味に聞こえてしまう)
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The / This(ザ / ディス) → Ze / Zis(ゼ / ジス)
「I sink so(アイ シンク ソー)」と聞こえたら、「沈む」と言っているのではなく「I think so(そう思う)」と言っているのだな、と脳内で瞬時に変換することがポイントです。
② 語尾の濁音(d, g, b)が清音化する
これも非常に頻繁に遭遇する特徴です。単語の最後に来る濁音が、無声音(t, k, p)に変化して発音されます。
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Dog(ドッグ) → Dok(ドック)
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Bad(バッド) → Bat(バット:コウモリや野球のバットに聞こえる)
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Job(ジョブ) → Jop(ジョップ)
「It is a good jop!」と元気よく言われたら、それは「Good job!」のことです。語尾がスパッと短く切られるような印象を受けるのが特徴です。
③ 「w」が「v」、「v」が「f」の音になる
英語とドイツ語で、アルファベットの読み方が異なることから生じるズレです。ドイツ語では「W」を「ヴィー」、「V」を「ファウ」と読みます。これがそのまま英語の発音に引っ張られることがあります。
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Water(ウォーター) → Vater(ヴォーター)
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We(ウィー) → Ve(ヴィー)
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Very(ヴェリー) → Fery(フェリー)
例えば「We will(ウィー ウィル)」が「ヴィー ヴィル」のように聞こえたら、この法則が働いている証拠です。
④ 「r」の音が喉の奥で鳴る(または消える)
ドイツ語の「R」は、フランス語のように喉の奥を震わせて出す(うがいをするような)独特な音です。そのため、英語を話す際にも「R」の音が喉の奥で鳴るような、少し力強い響きになることがあります。
また、語尾の「-er」などは、イギリス英語のように伸ばさずに「ア」と短く発音されることが多いです(例:Water → ヴォータ)。
3. なぜそのように発音されるのか?(ドイツ語のルールから紐解く)
ITのシステムに規則性があるように、言語の発音にも明確なシステム(ルール)が存在します。ドイツ人が上記のような発音になるのは、決して英語が下手だからではなく、「ドイツ語の発音規則というOSの上で、英語というアプリケーションを動かしているから」と言えます。
例えば、前述の「語尾の濁音が清音化する」という現象。これはドイツ語における絶対的な発音ルールです。ドイツ語の「Hund(犬)」は、スペルは「d」で終わりますが、発音は「フント」となります。
このように、彼らは頭の中で正しく英単語をスペリングしていても、口から音を出す出力の最終段階で、無意識に母語であるドイツ語の音声フィルターを通してしまうのです。この背景の仕組み(なぜそう発音するのか)を理解しておくと、リスニングの際の混乱を避けることができます。
4. ドイツ人の英語をスムーズに聞き取る(リスニング)3つのコツ
では、実際にドイツ滞在中に彼らの英語を的確に聞き取るための、実践的なコツを3つ紹介します。
① 発音の変換ルールをあらかじめ頭に入れておく
最も効果的なのは、ここまで紹介した「th→s」「w→v」「語尾の清音化」という変換パターンを暗記しておくことです。会話中に未知の単語に遭遇した際、「もしかして、最初の『V』を『W』に直せば知っている単語になるのでは?」と逆算して推測できるようになります。
② 単語の響きではなく「文脈(コンテキスト)」から推測する
「Bat」と聞こえても、話の流れが映画の感想であれば「Bad(悪かった)」、「Dok」と聞こえても、公園の話であれば「Dog(犬)」であることは容易に想像がつきます。 発音の細部にこだわりすぎず、話の全体的なコンテキストから単語を特定する癖をつけましょう。ドイツ人の英語は文法が正確なことが多いので、文脈からの推測は非常に成立しやすいです。
③ はっきりと発音されるメリットを活かす
アメリカ英語のように単語と単語が滑らかに繋がる(リエゾンする)ことが少なく、ドイツ人は一つ一つの単語をブロックのように区切ってハッキリと発音する傾向があります。 これは、実は日本人にとっては非常に聞き取りやすいポイントです。独特の訛りさえクリアすれば、「どこからどこまでが一つの単語か分からない」という事態には陥りにくいため、リズムに乗ってしまえばネイティブの英語よりも理解しやすいと感じるはずです。
まとめ:発音のクセを知れば、ドイツ人とのコミュニケーションはもっと楽しくなる
ドイツ人が話す英語「デングリッシュ」には、特有の法則があります。最初は「th」が「s」に聞こえたり、「w」が「v」に聞こえたりして戸惑うかもしれませんが、ルールさえ分かってしまえば謎解きのようにスルスルと理解できるようになります。
フランクフルトでのワーホリ滞在中、私も最初は相手の言っていることが完璧に聞き取れず焦った時期がありました。しかし、彼らの発音の背景にある「ドイツ語の癖」を理解してからは、リスニングの壁を大きく乗り越えることができました。
ドイツ人は論理的で親切な人が多く、コミュニケーションをとるのが非常に楽しい国民性です。「訛り」を恐れるのではなく、それも文化の一部として楽しみながら、ぜひ現地での英会話・ドイツ語会話に積極的にチャレンジしてみてくださいね!

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