この記事では、2003年のワーキングホリデー経験をもとに、「ドイツは時間に厳しい」というイメージの実際と、現地特有の時間の使い方がもたらす内面の変化について紹介します。
漠然とヨーロッパ留学を考えているあなたが、ガイドブックには載っていない現地のリアルな空気感を知り、留学を通じてどのような精神的な豊かさを得られるのかをイメージできる内容になっています。
ドイツは時間に厳しいって本当?交通機関の意外なリアル
ドイツといえば「規律正しい」「真面目」「時間に正確」というイメージがありませんか?
テレビのニュースや歴史の授業で習うドイツは、なんだかカッチリしていて、少し近寄りがたい雰囲気があるかもしれません。

ぼくも渡航前は、「ドイツに行ったら、1分の遅刻も許されないような厳しい生活が待っているんじゃないか」と身構えていました。
電車やバスは日本の方が正確かもしれない
実際にフランクフルトで生活を始めて驚いたのが、公共交通機関が思ったよりも遅れることでした。
もちろん、基本的には時刻表通りに来るのですが、Sバーン(近郊電車)やUバーン(地下鉄)が数分遅れることは日常茶飯事。時には、何のアナウンスもなく電車が来ないなんてこともありました。
「あれ? ドイツって時間に厳しいんじゃなかったの?」
語学学校へ向かうホームで、ぼくは何度も時計を見ながら首をかしげました。
日本の電車のように、「数分の遅れでお詫びのアナウンスが流れる」ような緻密さは、実は日本特有のすごさだったんです。
ルールとしての「時間」には厳しい
ただ、電車の到着時刻には寛容でも、「決められたルールを守る」という意味での時間は徹底していました。
例えば、語学学校の授業開始時間。先生は時間ぴったりに教室に入ってきて、すぐに授業を始めます。
また、役所の手続きや病院の予約などは、時間厳守が鉄則です。「ちょっと遅れちゃった」という甘えは、通用しない空気が漂っていました。
ドイツの「時間に厳しい」は、相手を急かすというよりは、「お互いの時間を尊重するために、約束は守ろうね」という契約のようなドライさに近いのかもしれません。
ドイツ人が時間に厳しい背景にある「自分の時間」の大切さ
ファッションが好きなあなたなら、ヨーロッパのショップ巡りなんて夢見ているかもしれませんね。
でも、ドイツで生活すると、日本との大きな違いに直面することになります。
それは、「閉店時間」の厳しさです。
閉店法と日曜日の静けさ
ドイツには「閉店法(Ladenschlussgesetz)」という法律が色濃く残っていて、平日でも夜8時(当時はもっと早かった場所も)にはほとんどのお店が閉まります。
そして何より、日曜日はデパートもスーパーも、基本的にお店はすべてお休みなんです。
日本なら、日曜日はショッピングを楽しむ書き入れ時ですよね。
でもドイツでは、日曜日は「休息の日」。家族と過ごしたり、森を散歩したりするための時間として、法律レベルで守られているんです。
最初は「なんて不便なんだ!」と思いました。
でも、暮らしていくうちに気づいたんです。お店が閉まるからこそ、店員さんも家族との時間を大切にできるし、客であるぼくたちも「買い物をしない豊かさ」を知ることができるんだと。
オンとオフの切り替えがうまい
ドイツ人が時間に厳しいと言われる本当の理由は、ここにあるような気がします。
彼らは「仕事の時間」と「自分の時間」をきっちり分けたいのです。
だらだらと残業はしない。
閉店時間になったらレジを閉める。
その代わり、仕事中は集中して効率よく働く。
「時間に厳しい」というのは、他人を縛るためではなく、自分自身の大切な時間を守るための知恵だったのですね。
「ドイツは時間に厳しい」環境でぼく自身が得た気づき
さて、そんなドイツの環境に身を置くことで、ぼく自身はどう変わったと思いますか?
目的もなく、ただ「ここじゃないどこか」に行きたくて海を渡ったぼくですが、帰国する頃には大きな心境の変化がありました。
自分と向き合う時間が圧倒的に増えた
日曜日に街中のお店が閉まっていると、強制的に「暇」になります。
ネットも今ほど普及していなかった当時、ぼくはよくマイン川のほとりを散歩したり、カフェでただ通り過ぎる人を眺めたりしていました。
フランクフルトの街ゆく人々は、流行にとらわれず、自分に似合う服を堂々と着こなしていました。
ファッション好きのあなたならきっと共感してくれると思うけれど、流行を追うことだけがおしゃれじゃない。「自分は何が好きなのか」「自分はどうありたいのか」を、ドイツの人々は大切にしているように見えました。
時間に厳しい社会だからこそ生まれた「余白の時間」で、ぼくは自分自身とじっくり対話することができました。
「日本で何がしたいのか」「自分にとって幸せとは何か」。
そんな根本的な問いに向き合うきっかけをくれたのは、ドイツという環境があったからこそだと感じています。
日本の良さを再発見して帰国を決意
そして不思議なことに、外に出れば出るほど、日本の良さが見えてきました。
24時間いつでも買い物ができる便利さ、相手を思いやる細やかな気配り、電車の正確さ。
当たり前だと思っていたことが、実は素晴らしいことだったんだと気づけたんです。
当初は永住するつもりでしたが、「やっぱり日本ってすごい国なんだな」と心から思えたことが、ぼくの留学の一番の収穫でした。
日本に帰ってきてからは、再就職などで大変な時期もありました(それはまた別のお話で笑)。
でも、ドイツで過ごしたあの1年があったからこそ、今のぼくがあるのだと実感しています。
まとめ:ドイツで自分を見つめ直す時間を
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 「ドイツは時間に厳しい」のリアル
交通機関は遅れることもあるが、ルールや約束、閉店時間は厳格に守られる。 - メリット
強制的な「オフの時間」を体験することで、忙しい日本での生活では見えにくかった「自分の本当の気持ち」や「やりたいこと」と向き合うきっかけが得られる。
もしあなたが、目的が見つからないまま留学を迷っているなら、思い切って一歩踏み出してみるのも一つの選択肢です。
現地で生活し、ドイツの「時間に厳しい」文化や、人々のライフスタイルに触れることは、あなたの価値観を広げる良い経験になるでしょう。
まずは短期の語学留学や旅行からでも、現地の空気を肌で感じてみませんか?
その経験が、これからのあなたの人生を彩るヒントになるかもしれません。

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