突然スマートフォンの画面に見知らぬ番号が表示され、着信音が鳴り響く。恐る恐る出てみると、受話器の向こうから見知らぬ人の早口の英語が聞こえてきて、頭が真っ白になってしまった。ドイツでの生活をスタートさせると、あなたも一度はこのようなシチュエーションに遭遇するかもしれません。ぼく自身、2003年10月から2004年9月にかけてワーキングホリデービザでフランクフルトに滞在し、語学学校でドイツ語を学んでいました。当時はまだスマートフォンが普及しておらず、部屋の固定電話やシンプルな携帯電話が鳴るたびに、誰からの連絡だろうと心臓が縮み上がる思いをしたものです。相手の顔が見えず、身振り手振りといったジェスチャーも使えない電話という状況は、ただでさえ緊張するものですが、それが外国語となればなおさらでしょう。相手の感情やニュアンスが声からしか読み取れないため、不安は倍増してしまいます。しかし、英語での電話対応は、事前のちょっとした工夫と定番のフレーズを知っておくだけで、劇的にパニックを防ぐことができるのです。これからドイツへ渡航しようとしているあなたや、すでに滞在していて電話に強い苦手意識を持っているあなたへ向けて、ぼくの実体験を交えながら、いざという時に役立つ事前準備とすぐに使える英語フレーズを分かりやすく解説していきます。まずは、ドイツという国においてどのような場面で英語の電話がかかってくるのか、その背景から確認していきましょう。
ドイツ生活で突然の英語の電話がかかってくるシチュエーション
ドイツの公用語はもちろんドイツ語ですが、ヨーロッパの中心に位置している地理的な条件もあり、英語が非常に通じやすい環境が社会全体に整っています。特にぼくが滞在していたフランクフルトのような国際的なビジネス都市や、学生や研究者が多く集まるエリアでは、カフェやスーパーでも日常的に英語が飛び交っています。役所の窓口などでの対面コミュニケーションであれば、こちらがドイツ語に苦戦していると察知すると、担当者が親切に英語に切り替えてくれることも珍しくありません。しかし電話の場合、最初から英語でかかってきたり、こちらが英語で返答した途端に流暢な英語の高速トークに突入したりすることがよくあるのです。対面とは違い、お互いの言語レベルを視覚的に測り合うことができないため、容赦ないスピードで会話が進んでしまう傾向があります。
では、具体的にどのような用件で電話がかかってくるのでしょうか。よくある例として、インターネット回線の開通作業や接続トラブルに関するプロバイダーからの連絡が挙げられます。また、オンラインショッピングで注文した荷物の配達員が、アパートの入り口や複雑な作りの部屋番号を見つけられずに電話をかけてくることも日常茶飯事です。さらに、ビザの申請を審査している外国人局の担当者、アパートの大家さん、国際的なシェアハウスのフラットメイトなど、日々の生活の基盤に関わる重要な連絡が不意に電話で来ることもあります。
相手が誰であれ、予期せぬタイミングで着信があるため、心の準備ができていないまま応答してしまい、結果的にパニックに陥ってしまいます。ドイツ生活において、英語の電話はいつでもかかってくる可能性があるという前提を心に留めておくだけでも、いざという時の持ちようは大きく変わります。どのような場面で電話が来るのかを把握したところで、次は物理的にどのような備えをしておくべきか、具体的なステップへと進みましょう。
電話が鳴る前にやっておくべき効果的な事前準備
英語での電話対応がうまくいくかどうかは、電話が鳴る前の事前準備でほぼ決まると言っても過言ではありません。パニックになる最大の原因は、予期せぬ状況に対して何の武器も持たずに立ち向かおうとするからです。ここでは、今日からすぐに始められる具体的な準備を紹介します。
メモ帳とペンを常に手の届く場所に配置する
非常にシンプルですが、最も強力な対策がこれです。スマートフォンをよく置く場所や、部屋のデスクの上など、電話に出る可能性が高い場所には必ずメモ帳とペンを常備してください。電話口で聞いた日時、名前、電話番号、要件などを、頭の中だけで記憶しようとするのは危険です。記憶することに脳の容量を奪われると、相手の英語を聞き取る余裕が全くなくなってしまいます。とにかく聞こえた単語をカタカナでもいいので紙に書き留める習慣をつけてください。視覚的な情報として残すことで、冷静さを保つことができます。
個人情報を英語で書いたカンニングペーパーを作る
いざ電話に出ると、極度の緊張から自分の住所や電話番号すら英語でスムーズに出てこなくなることがあります。特にドイツの通り名や地名は長く複雑な綴りのものが多く、アルファベットで正確に伝えるのは一苦労です。そこで、自分の名前、住所、電話番号、メールアドレスを英語で読み上げられるように紙に書き出し、壁に貼るなどして手元に用意しておきましょう。これがあるだけで、本人確認を求められた時の安心感がまるで違います。
直近の予定から電話の用件をあらかじめ予測する
現在、自分がどのような手続きを進行中なのかを把握しておくことも重要です。明日はネット回線の工事が入るから作業員から電話が来るかもしれない、語学学校に問い合わせのメールを送ったからその返答があるかもしれない、といった具合です。あらかじめ予測を立てておくことで、電話に出た瞬間の「誰からだろう」という不安を大きく軽減できます。これらの準備を整えたら、次はいよいよ実践的なフレーズの引き出しを増やしていきましょう。
パニックを回避して冷静に対応するための定番フレーズ
電話対応では、複雑な文法や気の利いた言い回しは一切不要です。重要なのは、自分の置かれている状況を短くシンプルに相手に伝えることです。以下の定番フレーズをメモ帳に書き写し、いつでも見られるように手元に置いておいてください。いざという時にスムーズに口から出るよう、何度か声に出して練習しておくことをおすすめします。
電話に出る時の第一声
見知らぬ番号からかかってきた時、ドイツ語でどう出ればいいか迷うくらいなら、最初から英語で応答して相手の反応を見るのも有効な手段です。
Hello, this is (自分の名前).
もしもし、(自分の名前)です。
このように名乗ることで、相手はあなたが英語でコミュニケーションを取りたいのだと瞬時に理解してくれます。
聞き取れない時にストップをかける言葉
相手の英語が早すぎて理解できない時、一番やってはいけないのが、分かったふりをして適当に相槌を打つことです。聞き取れない時は、勇気を出して以下のフレーズで会話を止めましょう。
Could you speak a little slower, please?
もう少しゆっくり話していただけますか?
I am sorry, my English is not very good. Could you repeat that?
すみません、私の英語はあまり上手ではありません。もう一度言っていただけますか?
相手もあなたがネイティブスピーカーではないと分かれば、ペースを落として簡単な単語で説明し直してくれます。
折り返しやメールをお願いする時の表現
どうしても電話口だけで用件を処理しきれないと感じた場合は、無理に会話を続ける必要はありません。一旦仕切り直すためのフレーズを使いましょう。
Could you send me an email about this? My email address is…
この件についてメールを送っていただけますか?私のメールアドレスは…です。
I need to check my schedule. Can I call you back in 10 minutes?
予定を確認する必要があります。10分後にかけ直してもいいですか?
契約関係や重要な手続きの場合は、言った言わないのトラブルを防ぐためにもメールで送ってほしいと伝えることは、非常に全うな対応です。これらのフレーズを知っておけば、いざという時のお守りになります。それでは、最後にこれまでの内容を振り返りましょう。
まとめ
ドイツでの突然の英語の電話対応は、事前の環境作りと定番フレーズの準備で確実にパニックを防ぎ、乗り切ることができます。手元にメモ帳や個人情報のカンペを用意し、聞き取れない時のフレーズを知っておくだけで、着信音への恐怖心が薄れ、いつでも心に余裕を持って対応できるという大きなメリットが得られます。ぼく自身もフランクフルトに住んでいた頃は、完璧に話そうとしてプレッシャーを感じていましたが、要点さえ伝われば十分だと気づいてからは本当に気持ちが楽になりました。まずは、今回紹介した英語フレーズを紙に書き出し、電話の横に置いておくことから始めてみてください。言葉の壁にぶつかりながらも前向きに挑戦を続けるあなたのドイツ生活を、心から応援しています。

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