ドイツでの生活や旅行中、慣れない環境や寒さから体調を崩してしまうことは誰にでもあるものです。そんな時、心強い味方になってくれるのが街のあちこちにある「Apotheke(アポテーケ)」と呼ばれる薬局です。しかし、日本のドラッグストアとは仕組みが少し異なるため、「どうやって薬を買えばいいの?」「ドイツの薬は強すぎない?」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。
私自身、2003年から1年間フランクフルトで生活していた際、冬の厳しい寒さに負けて何度も薬局のお世話になりました。最初はドイツ語での症状説明に戸惑いましたが、薬局の仕組みと定番の常備薬を知ってからは、軽い不調なら自分で対処できるようになり、精神的にも非常に楽になったのを覚えています。
この記事では、ドイツの薬局の賢い利用法から、風邪や喉の痛み、胃腸の不調など、いざという時に役立つ具体的な常備薬の選び方まで詳しく解説します。ドイツでの安心な滞在のために、ぜひ役立ててください。
ドイツの薬局事情:ApothekeとDrogerieの使い分け
ドイツで薬を探す際、まず知っておくべきなのが「Apotheke(アポテーケ)」と「Drogerie(ドロゲリー)」の違いです。
専門性の高いApotheke(薬局)
赤い「A」のマークが目印のApothekeは、薬剤師が常駐する専門的な薬局です。医師の処方箋(Rezept)が必要な薬はもちろん、処方箋なしで購入できる一般用医薬品(OTC医薬品)もすべてカウンター越しに対面で販売されます。
「風邪気味なので、おすすめの薬を教えてください」といった相談ができるのが最大の特徴です。薬剤師さんは非常に専門知識が豊富で、多くの場合英語での対応も可能です。フランクフルトのような国際都市であれば、英語で症状を伝えれば適切なアドバイスをくれるでしょう。
日用品が揃うDrogerie(ドラッグストア)
一方で、dm(デーエム)やRossmann(ロスマン)に代表されるDrogerieは、日本のドラッグストアに近い存在ですが、扱っているのはサプリメント、ハーブティー、スキンケア用品、日用雑貨などが中心です。
ここには「医薬品」は置かれていません。例えば、強力な痛み止めや抗生物質が必要な場合はApothekeへ行く必要があります。Drogerieは、健康維持のためのビタミン剤や、軽い喉の違和感に対応するのど飴などを買う場所として使い分けるのが賢明です。
薬を買う場所が分かったところで、次は最も頻繁に遭遇するであろう「風邪」の症状に対して、どのような薬が定番なのかを見ていきましょう。
風邪の引き始めに!喉・鼻・熱に効く定番の常備薬
ドイツの風邪薬は、症状に合わせて単体で選ぶのが一般的です。日本のような「総合風邪薬」も存在しますが、薬剤師さんに相談すると症状に応じたものをピンポイントで勧められることが多いでしょう。
喉の痛みと咳のケア
ドイツの冬は乾燥しているため、喉から風邪が来るケースが非常に多いです。
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Lemocin(レモシン): 軽い喉の痛みや殺菌に効くトローチです。オレンジ味で飲みやすく、初期症状に重宝します。
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Dobendan(ドベンダン): より強い喉の痛みがある時におすすめです。麻酔成分が含まれているタイプもあり、即効性が期待できます。
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Prospan(プロスパン): アイビー(ツタ)の抽出物を使った自然派の咳止めシロップです。子供から大人まで広く使われており、ドイツの家庭の定番です。
鼻詰まりと発熱
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Nasenspray(ナーゼンスプレー): 鼻詰まりがひどい時に使います。ドイツの点鼻薬は非常に効果が高いですが、依存性が指摘されることもあるため、使用期間には注意が必要です。海塩(Meersalz)のみの優しいタイプもあります。
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Grippostad C(グリポスタッドC): ドイツで最も有名な総合風邪薬の一つです。ビタミンCが含まれており、熱や鼻水、咳など複数の症状がある時に便利です。
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Paracetamol(パラセタモール)/ Ibuprofen(イブプロフェン): 解熱鎮痛剤の定番です。ドイツの錠剤は1錠あたりの成分量が多い場合があるため、初めて使う際は薬剤師さんに「一回の用量」を確認することをお勧めします。
風邪薬だけでなく、食生活の変化やストレスから来る「胃腸のトラブル」に備えることも、海外生活では欠かせません。
胃腸の不調や怪我に備える!持っておくと安心なアイテム
ドイツの食事は肉料理やジャガイモが多く、油分も多めです。胃もたれや腹痛、さらには慣れない硬水によるお腹の不調に効くアイテムもチェックしておきましょう。
胃腸薬と整腸
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Iberogast(イベロガスト): 9種類のハーブから作られた液体薬です。胃もたれ、吐き気、腹痛など、胃腸のあらゆる不調に効く万能薬としてドイツでは非常に信頼されています。私もフランクフルト滞在中、外食が続いて胃が重い時によくお世話になりました。
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Buscopan(ブスコパン): 日本でもお馴染みですが、腹痛や胃の痛みを抑える鎮痙剤です。
傷薬と消毒
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Bepanthen(ベパンテン): 軟膏の王様です。切り傷、擦り傷、火傷、肌荒れまで何にでも使える万能軟膏として、どの家庭の救急箱にも必ず入っています。
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Octenisept(オクテニセプト): スプレータイプの消毒液です。染みないタイプが多く、怪我をした際の応急処置に便利です。
これらの薬を揃える際、薬剤師さんとスムーズにやり取りするための「伝え方のコツ」を知っておくと、さらに安心感が増します。
薬剤師さんとのコミュニケーション術と注意点
Apothekeでの買い物は対面式が基本ですので、自分の症状を的確に伝えることが大切です。ドイツ語が完璧でなくても、ポイントを押さえれば大丈夫です。
症状を伝える英語・ドイツ語フレーズ
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「喉が痛いです」: I have a sore throat. / Ich habe Halsschmerzen.
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「鼻詰まりがあります」: I have a stuffy nose. / Meine Nase ist zu.
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「熱があります」: I have a fever. / Ich habe Fieber.
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「処方箋なしで買える薬はありますか?」: Is there anything I can get without a prescription? / Haben Sie etwas rezeptfreies?
注意したい「薬の強さ」
ドイツの薬は、日本のものに比べて有効成分の含有量が多いことがよくあります。例えば、鎮痛剤のイブプロフェンでも、日本では1回150mg〜200mgが一般的ですが、ドイツでは400mg以上の錠剤が普通に売られています。
小柄な日本人の場合、効きすぎてしまうこともあるため、「Is this dosage okay for me?(この用量で私には大丈夫ですか?)」と確認したり、最初は錠剤を半分に割って飲んだりするなどの工夫も検討してください。
夜間・休日の緊急当番薬局(Notdienst)
ドイツの薬局は通常、日曜・祝日は閉まっています。しかし、地域ごとに持ち回りで「Notdienst(ノートディーンスト)」と呼ばれる24時間営業の当番薬局が必ず1軒は開いています。
自分の近くの当番薬局は、近所のApothekeの入り口に貼ってあるリストや、インターネット(aponet.deなど)で簡単に確認できます。夜中に急に体調が悪化しても、薬を手に入れる手段があることを覚えておきましょう。
最後に、ドイツらしい健康法についても少し触れておきたいと思います。
まとめ:ハーブの力を借りるドイツ流健康管理
ドイツの薬局(Apotheke)は、単に強い薬を買うだけの場所ではなく、あなたの健康をトータルでサポートしてくれる心強い存在です。最後に重要なポイントを振り返りましょう。
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Apothekeは対面販売。薬剤師さんに相談して薬を選ぶ。
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風邪や胃腸の不調には、LemocinやIberogastなどの定番を知っておく。
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ドイツの薬は成分量が多い場合があるため、用量に注意する。
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日曜・祝日は「Notdienst(当番薬局)」を利用する。
また、ドイツには「Arzneitee(アルツナイテー)」と呼ばれる、薬用ハーブティーの文化も深く根付いています。風邪の引き始めには「Erkältungstee(風邪用茶)」、喉には「Salbeitee(セージ茶)」を飲んでゆっくり休むのがドイツ流です。これらはDrogerieでも手軽に買えるので、薬と併用して試してみるのも良いでしょう。
自分の体に耳を傾け、適切な薬やハーブの力を借りながら、ドイツでの生活を存分に楽しんでください。

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